■ 幹細胞 (かんさいぼう)stem cell
成長した生物の細胞は、普通は特定の身体組織にしか入れないように機能・役割が縛られています。細胞分裂で増殖しても、心臓筋肉の細胞は心筋細胞、皮膚の細胞は皮膚細胞のまんまで増えていくだけ。
ところが。
幹細胞(かんさいぼう)は、そこらの一般細胞とは違って、細胞分裂しながら別の機能を持つ細胞に変身することができる特殊な「未分化」の細胞。(だもんで、俗に万能細胞とかいう愛称で呼ばれたりしています)
例えば、受精卵は最初はたった一個の細胞だけれど、分裂増殖していくと、身体の各部分向けに機能が分かれたさまざまな種類の細胞になっていきますね。受精卵が育っていく過程でたくさんの幹細胞ができ、それがどんどん体の各部分の細胞に変身していくのです。
幹細胞については、まだまだわからないことがたくさんあります。
いろいろな身体の部分や臓器を幹細胞から作り出せるようになれば、移植用の臓器が作れるよね、再生医療の可能性が大幅に広がるよね、一発逆転で大儲けもできるよね!と期待が大きく、急速に研究が進んでいます。
幹細胞にはいろいろな種類があります。
代表的なものは「ES細胞」と「骨髄幹細胞」。
●育つ前の初期胎児にあるタイプ
ES細胞=Embryonic Stem Cell:ESCs
授精した胚(受精卵)から取りだした「胚性幹細胞」のこと。
●育った人間の体にあるタイプ
成人の骨髄から取りだした「骨髄性幹細胞」
(骨髄幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞)
臍帯血(さいたいけつ:赤ちゃんお誕生の時のヘソの緒から採る血)にも幹細胞はありますし、胎盤、血液、毛根、筋肉、脳、皮膚など、身体のあちこちに幹細胞が分布していることがわかってきています。臍帯血は「手軽に採取できる幹細胞」として臍帯血バンクに預けられたりしていますね。
そして、2007年からは、大人の細胞の遺伝子を組み替えた「iPS細胞(人工多能性幹細胞、俗に新型万能細胞とも言われる)」が、日本の科学者が最初に作ったんだぞ!という意味も含めて、話題をかっさらっています。
■ ES細胞 ■
ヒトの胚性幹細胞(はいせいかんさいぼう/ES細胞 いーえすさいぼう)は”最も万能性が高そう”なので使い勝手が良さそうなのですが、取り出すときに授精した胚(初期の赤ちゃん)を殺したり傷つけたりしてしまうことから、倫理問題で頭を抱える国が少なくないのです。
※ 胚性幹細胞(ES細胞)による再生医療を 「水子(みずこ)」をばらばらにして臓器をこしらえるのだ と表現したら、これどう思います?
■ 成人性幹細胞(成体幹細胞)■
大人の体(骨髄など)から採れる成人性幹細胞(成体幹細胞)は、現状ではES細胞ほどの変身可能性(機能分化の自由度)は、持ってはいません。
でも成人性幹細胞なら「自分の細胞で自分の身体を再生できる」わけで、受精卵殺しのような倫理問題がない、本人の細胞を使えば拒絶反応もない、など、治療現場での使い勝手は良さそうです。
■ ES細胞と iPS細胞の違い■
ES細胞は、胚(生まれる前のごく初期の赤ちゃん)を解体して採取します。ES細胞は、性能は高いと見られているのですが、ES細胞を治療目的で移植する場合、患者のものではない別の人間からの細胞を移植することになり、拒絶反応の問題が出てきます。
iPS細胞は、大人の細胞の遺伝子の働きを改変したもの。性能の調整の方法がまだ確立されていないので可能性は未知数ですが、iPS細胞を治療目的で移植する場合、患者本人の細胞を改造する関係で、拒絶反応は軽くてすむんじゃないかと期待されています。あと、ES細胞が抱えている「生命倫理」の問題点も、iPS細胞なら回避できるんですね。
■ 万能細胞医療は発展途上 ■
現状ではES細胞やiPS細胞を用いた治療は、まだまだ解決すべき問題点が多く試行錯誤中の段階です。
●移植したら8割がガンになってしまった、という実験事例もあります。
幹細胞がどうやってどんな組織に変化するか、把握しきれていないのです。
●ヒトに効くどうかわからない段階の、動物でやってみただけの研究成果が、大きく報道されていたりします。
●「幹細胞」からはいろいろな人体パーツが作れるわけで、「親が存在しないのに、幹細胞から作った精子と卵子から子供ができてしまう」こともありえるのです。もともと、複雑な倫理問題ぬきには語れない危ういシロモノなのではあります。
2004/08 ネズミからヒト誕生、水子から孫誕生
2008/01 教えて!goo
山中教授のiPS細胞作成が画期的なのはなぜ
2007/12 NHK解説委員室ブログ 視点・論点
「ヒトiPS細胞の可能性と課題」
┗ 山中伸弥教授が語る
2008/01 NHK解説委員室ブログ 時論公論
「“万能細胞”展望と課題」
┗ iPS細胞研究の意味 オールジャパン体制の意味
※ いろいろな種類の「幹細胞」の中でも、造血幹細胞(血液幹細胞)については、すでに白血病や遺伝病の「骨髄移植治療」などで活躍実績が重ねられています。
■ !注意! ■
近年、「難病も治せる!」と謳って、実証されていない怪しい幹細胞療法や臓器移植をすすめる悪質な業者が、世界的に問題になっています。わずかな希望を求めてすべてを賭け、手術を受けた結果、大金をぼったくられるだけでなく、後遺症もこうむるという被害も発生。
悪質な業者は、たいへんこぎれいなサイトを作って客を引っ掛けようとしています。(当方のサイトの内容もパクられたりしました)
特殊な医療で打開をはかる場合は、十分に各方面と連絡をとって、治癒確率の計算は正しいのか、逆効果ではないのか、状況確認を行って下さい。
幹細胞ツアー:中国などのヤバイ幹細胞治療を受けに行く人々
メディカルツーリズム(医療目的の海外旅行)についての報道や論文
異常時に即死する「自殺スイッチ」を備えるES細胞(2012/05)
2012/05 LiveScience Stem Cells Carry 'Suicide Pills' for Instant Death
DNA損傷薬剤に晒すと、普通の細胞なら24時間ほど生き延びるところが、ヒトES細胞はわずか5時間で死んでしまう
即死の回路( Bax スイッチ)は、分化する前のわずかな時期しか動作しない
Baxはミトコンドリアの活動を止めてしまうのだ
遺伝子に傷を持つ細胞は生体にとって危険であるが故ではないか
2012/05 EurekAlert Stem cells poised to self-destruct for the good of the embryo
胎児の利益のために自爆する用意ができている幹細胞
DNAの損害が発生中の胚への脅威になりうるなら、ES細胞は、自殺するよう用意されます。
幹細胞研究に去年の4倍もの資金を投入する韓国(2012/05)
2012/05 news@nature.com South Korea steps up stem-cell work
去年の4倍の資金を幹細胞研究に投入するぞ
目的は、早期の商業化だ
Regenerative medicine gets cash boost but stricter regulations are needed to ensure safety.
再生医療は資金の後押しを得ますが、より厳しい規則が、安全を確実にするのに必要です。
心臓線維芽細胞を心筋細胞にダイレクトリプログラミング(2012/04)
マイクロRNAを使って心臓線維芽細胞を心筋細胞へと直接変換できた
虚血性心筋梗塞後に生じる心臓の線維芽細胞は、マイクロRNA使って心筋細胞へと直接再プログラムしうる
ニュータイプの脳幹細胞、癌を狙うタイプの神経幹細胞(2012/04)
2012/04 EurekAlert New stem cell found in the brain
成熟した脳の中から新しいタイプの幹細胞を発見
これらの細胞は、異なる細胞数種類に増殖&形成できます
最も重要なことは、彼らは新しい脳細胞を形成できるのです。
2012/04 【日本語記事】BioToday 新たな脳幹細胞が見つかった
これまでに分かっている神経幹細胞とは異なる幹細胞が脳血管周囲に存在する
高アンモニア血症の症状をES細胞で緩和する(2012/04)
新生児の重い肝臓病の治療を目指した臨床研究
有毒物質アンモニアを分解する酵素のない「高アンモニア血症」
患者の肝臓へ、ES細胞から作った正常な肝臓細胞を移植
ES細胞でも根治はできないが、「肝移植までの間の『つなぎ』の治療にしたい」


『「大発見」の思考法 iPS細胞vs.素粒子』









